どんな分野でも成功する上で健康は欠かせない。相場でもそれは成功するための大きな
資産である。少なくとも年に2回は、建玉を全て手仕舞って市場から完全に手を引き、
休暇を取るか市場から離れて休息すべきである。心を休めて判断を明晰にすることである。
人間は休みもせず、また気分転換もせずに、ある仕事に長く継続的にしがみついていると、
判断が歪んでしまう。型にはまり見方が一方的になってしまう。
どちらのポジションを取っていようと、相場が自分に都合の良い方向に進むよう期待する
のが人情と言うものであり、そのため、自分の側に都合の良さそうな兆候だけを重視
してしまう。ポジションを持っていなければものごとをあるがままに見ることができ、
願望や恐れを排除して歪みの無い眼で市場を判断することができる。来る日も来る日も
市場から離れず、機会をひとつも逃すまいとするトレーダーは,遅かれ早かれ無一文に
なってしまうものだ。
筆者は科学的予測に従って成功したあるトレーダーを知っているが、彼は1年に5~6回
以上の取引は決してしなかった。もし彼が上昇を見込んで冬か春先に株を買い、それが
思惑通りに上昇すれば売って利益を確保する。それから彼は時には数ヶ月も市場を離れる。
夏になって市場が強気もしくは弱気の兆候を見せ始めれば、彼はまた参入し、更に市場が
彼の思惑通りに動けば、それに付いていって数ヶ月間はピラミッディングする。相場の
終わりが近いとの兆候を得れば建玉を手仕舞い、儲けを手にして渡り鳥のように陽光の
降り注ぐ南部へと休暇に向かう。時には冬の間フロリダで狩りや釣りを楽しみ、その後
アーカンソー州のホット・スプリングスへ行き温泉につかったのち、次の相場に備えて
鋭気を養ってウォール街に戻るのである。
彼は気に入った株の取引についての専門家となり、それを深く研究し、ほとんど確実に
儲かるというシグナルの出るのを注意深く待つ。その兆候が現れると行動を開始する。
時の来るまでは決して急がない。しかし時が来れば躊躇しない-売るか買うかである。
冷静、沈着を保ち、仕掛けまたは手仕舞いの時を待つ。
彼が決してやらないことがひとつある。儲けの額を前もって決めたり、抜け出す時期を
特定しないことである。筆者はよく、相場が彼の思惑と違う方向へ動くのを見たが、
そんな時彼は建玉を手仕舞って「事務所に帰って、しばらく様子を見守ることにしよう」
と言うのである。彼が次の取引を開始するまでは何日か、あるいは何週間も掛かること
もあったが、いったん再開すると、それは適切で明確な理由に基づいており、2回目の
取引のうち90%は成功した。彼が儲かることを期待して最初の取引にしがみついたと
しよう。彼の判断は既にバイアスがかかっており、その信頼性は低下したままだったで
あろう。市場を離れて公平な見地から眺めること、これしかない。明確なトレンドのない
場合は市場から離れて観察しながら待つ。そうすればその忍耐は必ず報われるであろう。
(P49)
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